新技術で変わる薬剤師の仕事

薬学部

松永 和久

 

 昨年のコラムでは、人工知能の進化について話題にしました。

 これから更に、人工知能やロボットが進化するにつれ、無くなっていく仕事のランキングが、雑誌やネットニュース等でたびたび話題になりますが、薬剤師は、なんとか無くならない仕事の方に分類されているようです。しかしそれは、薬剤師の仕事が新技術の影響を受けないと言うことではなく、むしろ人工知能やロボットをうまく取り入れて、変化していくことを期待した上でのランキングだろうと思います。

 薬剤師の仕事というと、多くの方が、処方箋を元に薬を揃える「調剤」という仕事を思い浮かべるのではないでしょうか。一見すると、ただ薬を数えて揃えているだけに見えるため、誰でも出来るとか、もっと早くできないのかとお叱りを受けることもある仕事です。実際には、調剤をしている薬剤師は、手を動かしながら、頭の中はフル回転させ、処方内容のチェックをしています。これまでの投薬歴を見て、確認の連絡を入れたり、処方内容について提案を行っていたりすることもあります。そういう部分は見えないところで行われているため、なぜ時間がかかるのか伝わっていないところがあるように思います。

 調剤業務のうち、薬を処方箋通りに揃えるという点では、既にロボットが活躍しています。一回分の薬をまとめて一袋に詰める一包化や注射薬のセットを揃える注射薬の払い出しロボットは、多くの病院や薬局で活用されています。最近では、粉薬を自動で秤量し一回分ずつ分けて袋に詰める散薬調剤ロボット、シロップのような水剤をボトルに詰める水剤分注ロボット、更には、錠剤がシート状にパックされたPTPシートを必要な分だけ切り取って集めてくれるピッキングロボットも導入されてきています。

 処方箋の内容をチェックする処方箋監査の仕事をサポートする人工知能の研究も進められていますので、現状の調剤業務の大半は人工知能とロボットに置き換えられてしまうかもしれません。しかしこれは逆にチャンスでもあります。日々の業務に追われ、あまり時間を割けなかった、コミュニケーションによる服薬状況や薬の効果・副作用のチェック、ご自宅に訪問して薬の供給や残薬整理などを行う在宅医療に注力できるようになることが期待されます。それに伴い薬剤師という仕事は、ますます、コミュニケーション能力と、日々のちょっとした変化に気づく感性と、創意工夫が必要な職業に変化していくと予想できます。

 また2014年のコラムでは、3Dプリンターを話題にしました。2)

 3Dプリンターで製造されたSpritamという錠剤を、米国FDAが2015年8月に認可しています。3Dプリント技術は、粉を圧縮する従来の錠剤製造法に比べて、大量生産には向きませんが、多品種を少量生産できる特性を活かし、将来的には病院や薬局内で個々人に合わせたオーダーメイドの錠剤を製造し、調剤することができるようになるかもしれません。

 薬剤師を目指す薬学部に限らず学生の皆さんには、新技術の導入による仕事の変化を恐れず、むしろ楽しんで欲しいと思います。

 1) AlphaGoの衝撃とシンギュラリティ https://www.ipc.fukuoka-u.ac.jp/column/y2016/m05/

 2) そろそろ3Dプリンターが欲しい https://www.ipc.fukuoka-u.ac.jp/column/y2014/m05/